#33 私たちは甘えるためにマルチプレイしている
2026.04.09(Thu) : RAW-Fi ZINES Newsletterはゲーム/デザイン/マーケティングに関するニュースレターを毎週木曜日に配信しています
私たちは甘えるためにマルチプレイしている
「甘えるな」
新年度になり厳しい先輩から早速こんな釘を刺された新社会人もいるかもしれない。だがゲーム、ことマルチプレイにおいて「甘え」こそ重要なエッセンスではないかと思うようになった。
昨年から筆者は『ELDEN RING NIGHTREIGN』をプレイし続けているのだが、とにかく面白い。困ったことにずっと面白いのである。このゲームをご存知ない方に簡単にゲームの概要を説明すると、基本3人で遊ぶマルチプレイゲームで、リムベルドと呼ばれるフィールドを舞台に強大な敵と戦いながら3日間を生き残ることを目的にしたゲームだ。プレイヤーはフィールド上の敵を倒しながら徐々にレベルアップを行い、道中に落ちているアイテムを拾いながら自身を強化しながら、3日目に待ち受ける強力なボスとの対決に備える。『モンスターハンター』シリーズが十数分で1体のモンスターをじっくり倒すゲームだとすれば『ELDEN RING NIGHTREIGN』は約40分をかけてじっくりとレベリングしモンスターの討伐を目指す、という比較もできるだろう。
そしてこのゲームにおける敗北条件は「3人のHPが0になり、同時に瀕死(ダウン)になること」。そしてこのゲームの特徴がその仲間を一定回数殴ることで蘇生できる「救助」システムだ( 殴って蘇る…とは感覚的には不思議だが、味方に取り憑いた瘴気を攻撃で取り払う、という理屈づけらしい)。
なので理論上は一人でも生き残っていれば無限にチームを立て直すことができる。さらに救助は回復スキルは不要、そして特殊なアイテムも必要ない、というのは思い切ったシステムである。ただし、一度倒れるごとに蘇生に必要な殴り回数が増えていくというペナルティーがある。最初は円形の1ゲージ、もう一度倒れれば2ゲージ、次は3ゲージ分という具合だ。

蘇生が可能とはいえ、限られた時間の中、敵を素早く倒すことを繰り返さなければならないゲーム性上、ダウンするというのはそれなりに味方の負担になる(3ゲージともなればなおさら)。なるべくダウンしないようにゲームを進行させるのが攻略のコツだが、この「ダウン」と「救助」こそがこのゲーム最大の肝、楽しさを生み出しているポイントだと筆者は感じている。
大人になればますます感じることだと思うが、私たちが面と向かって人に甘えることは難しい。だが『ELDEN RING NIGHTREIGN』では「ダウン」と「救助」の関係を通じて他者に堂々と「甘え」られる。本作に限らずマルチプレイゲームでは「甘えるな」という言説が幅を利かせているが、そもそも1人でクリアできるのなら1人で出撃すればよいのである。それでも私たちがマルチプレイを求める理由、それは戦闘効率や攻略の都合以上に、他者への「甘え」の機会を求めているに他ならないのではないだろうか?
だがパーティーのお荷物になってしまっては気持ちよく甘えることもできないというものである。理想は甘えを正当化できる程度の活躍をし、時に「しょうがないなぁ😽」とメンバーの蘇生を行いつつ「これくらいは許してね😹」と思いながらダウンする——この理想の関係を比較的容易に実現するのが『ELDEN RING NIGHTREIGN』なのだ。
さてこの「甘えの構造」は何もマルチプレイゲームだけではく、私たちの生活、特に仕事の関係性の中にもあるべきものではないだろうか。精神科医・精神分析家の土居健郎は著書『「甘え」の構造』(1971)において、「甘やかし」「甘ったれ」を否定しつつ、「甘え」「甘えさせる」人間関係が私たちが集団生活を支えるものであるとして肯定している。実は「甘え」こそが社会の潤滑油なのだ。
仕事も『ELDEN RING NIGHTREIGN』同様「甘え」が許容される程度に頑張り、時に「甘え」そして時に「甘えさせる」ことでその恩を返す営みとも言える。どうかぜひ新社会人の皆さんも気負わず立派に「甘え」られる人になってほしい…以上をもって3ゲージダウンを連発してきた甘えの先輩からのエールとさせていただきたい。
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