#26 Flash、そしてAdobe Animateの終末に寄せて
2026.02.05(Thu) : RAW-Fi ZINES Newsletterはゲーム/デザイン/マーケティングに関するニュースレターを毎週木曜日に配信しています
Flash、そしてAdobe Animateの終末に寄せて
2月2日、AdobeからAdobe Animateの販売とサポートの終了が発表された。ところが即座にコミュニティからは終了に対する反発の声やオンライン署名が立ち上げられ、2月3日にAdobeが終了の「撤回」を発表した。
そもそもAdobe Animateについて詳しくない読者もいるであろう。Adobe AnimateはAdobeが提供するアニメーション制作ツールで「ベクターベースでの描画」や「独自のプログラミング言語」を備えていることが特徴のアプリケーションである。
そもそもAdobe Animateの前身は、Adobeが買収したMacromedia社が制作していたFlashというばオーサリングツールだった。「Flash」という名前に聞き覚えがある読者も多いかもしれない。20年ほど前では現在ほどブラウザが動画のようなマルチメディアを扱う技術を持っておらず、それを補完するような形でFlash Playerというプラグインが利用されていた。例えば初期のYouTubeやニコニコ動画の動画プレイヤー箇所はFlashで制作されていた。
Flashの表現力の高さの恩恵を最も預かったのはWeb制作会社であろう。2000年代の企業サイトなどは軒並みFlashで制作されており、その自由度の高いデザインや高度なインタラクティブ性によって新しい体験を持ったWebサイトが生み出されていった。ちなみに筆者もその末席でFlashを触っていた人間の一人である。当時の空気を感じてもらうのは難しいが、当時のFlashサイトのアーカイブをまとめているサイト「Japanese Flash Web Design Archives」をご覧いただきたい。
「WebブラウザのプラグインとしてのFlash」は、iPhone発売以降のモバイルファースト時代に追いつけず、急激に衰退した。だが先にも挙げた通り、Flash——もといAdobe Animateはアニメーション制作ツールである。Adobe Animateの強みはベクターベースでの「オブジェクト化」とわかりやすいレイヤーとタイムラインの組み合わせ、そしてフレーム補完である。以下のポストの動画を見ていただくとその凄さが直感的にご理解いただけるのではないか。
例えばVtuberが好きな人なら耳にしたことがあるであろうツール「Live2D」もFlash版が作られていたこともある。オブジェクト単位での細かなアニメーション指定と相性がいいツールなのだ。
ローコストな制作が可能であるが故に、アマチュア的なWeb動画や、『秘密結社鷹の爪』を代表作とする蛙男商会のようなコンパクトな映像作品の流通を支える土壌にもなった。またプロの現場でもサイエンスSARUがAdobe Animateを積極的に取り入れており『ピンポン THE ANIMATION』『夜明け告げるルーのうた』といった代表的な作品に用いられている。世界に目を向ければフランス・デンマークの共同製作映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』をはじめとした劇場クラスのアニメーション作品にも用いられている、現役のアニメーションツールなのである。
そしてAdobe Animateのもう一つの特徴である「独自のプログラミング言語」にも触れていきたい。プログラミングができるということは、つまりゲームが作れることを意味する。現在のインディーゲームの隆盛のもっと以前、Web上には無数のFlashゲームが存在していた。
つい忘れがちだが、ガラケー時代にも携帯電話にFlash Liteと呼ばれるFlash Playerの簡易版が搭載されていたことも忘れてはいけない。i-modeなど携帯各社のネットワークサービスで配信されていたゲームや、初期のソーシャルゲームにFlash Liteが用いられていた。PC向けのFlash Playerに比べれば圧倒的に非力であったが当時の携帯のスペックから考えれば致し方ないことであった。
一方、その制約の中で生まれる表現もあった。例えば昨年リリースされた『MotionRec』に携わっていたm7kenji氏が2010年にリリースした『ロクジョーヒトマ』は、ガラケーの限られたボタンと表現力で一つの作品を作り上げている。
…と、今回はFlashとAdobe Animateがクリエイティブの世界で培ってきた成果の一片をご紹介した。個人的に最も大きいと感じる成果は、Webクリエイティブの民主化に貢献した点にある。プラットフォームも、SNSも整備されていなかった時代に、私たちはインタラクティブな何かを作って発表できるという可能性を見せてくてたのがFlashだったのだ。
Adobeの判断によってAdobe Animateの終了は回避された。だが事業上の課題があることは明白であり、再び終了が検討されることは想像に難くない。身近なゲームエンジンとしてUnityやUnreal Engineがデファクトとなり、一方でRiveやUnicorn Studioといった新興のアニメーションツールも盛り上がりを見せている。残念ながらこれからのAdobeに何ができるのかは計りかねるが、それでも「Adobe Animateの終了」が避けられないとしても、それに代わる何かを提示してほしいと期待せずにはいれない。
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2月7日(土)秋葉原MOGRAで行われるクラブイベント「秋葉原重工」15周年のアニバーサリーに筆者・福岡がVJとして出演します。ゲストがとにかく豪華です。いや、KEN ISHIIさん、砂原良徳さん、HIROSHI WATANABEさんがMOGRAに集まっちゃうの〜〜〜!?!?私は以前紹介した(#19)自作のVJツールを使う予定です。コンパクトな箱ならでは臨場感をぜひ現地で体感してください!
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会場:秋葉原MOGRA
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